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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)5590号 決定

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人鍛冶千鶴子の上告趣意について

論旨は刑訴四〇五条所定の上告理由に当らない。

なお、同法四一一条適用の問題として審究するに、公職選挙法一四一条一項にいわゆる「主として選挙運動のために使用される自動車」とは、選挙運動のために使用することが主たる目的とされている自動車という意味であって、選挙運動のために自動車を傭上げ使用した場合にもその契約の目的、使用の状況等によって判断されなければならないのである。本件において、第一審判決挙示の証拠によると、被告人は投票日の前日たる昭和二七年一〇月四日に判示志布志町田之浦、内之倉方面において、最後の選挙運動を行うため、本件自動三輪車を順次雇入れ使用したこと、右自動三輪車は単に一定の区間を限って拡声器を運搬するためではなく、右二部落一円に亘り要所要所にて随時選挙運動をするためであったこと、及び被告人は当日午前八時頃から午後六時頃までの間右二部落の各所において本件自動三輪車に積んであった拡声器を車から降ろし、右拡声器を用いて選挙運動をしたことが認められるのであるから、同車の使用は選挙運動のために使用することが主たる目的であったと解するのが相当であって、被告人が同車上から演説又は連呼をした事実がなかったとしても、何等右判断を妨げるものではない。そして、原判決の説明は多少右と異るところはあるが、結論において同一に帰するのであるから、原判決には所論のような違法は存しない。従って、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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